2025年度助成事業
今年度の北海道の自然と野生生物の保全・保護・調査活動に取り組む団体や個人からの助成申請は、前年度より1件少ない計14件でした。その中から2025年度の助成事業は、一般助成に9団体計194万円、「杉本とき鳥類保護助成基金」の助成は3団体に53万円の総額247万円の助成を決めました。助成対象と事業名、助成額は以下の通りです。(市町村名は主な活動地域か、事務局所在地。敬称略)
一般助成
- 札幌市・北海道爬虫両棲類研究会「道民参加型・道内爬虫類両生類分布一斉調査事業(ハープソンHokkaido2025)」30万円
- 札幌市・山のトイレを考える会「大雪山系と日高山脈のトイレ問題解決に向けた取り組み」25万円
- 札幌市・特定非営利活動法人ウォークラボ札幌「身近な野生生物との共生~さっぽろラウンドウォークを歩いて知ろう・学ぼう」35万円
- 小樽市・特定非営利活動法人自然教育促進会「スズラン群生地の保全のための環境ボランティア」29万円
- 滝川市・たきかわ環境フォーラム「野生動物と共存する「地域の力」育みプロジェクト(2年目)」10万円
- 江別市・国際交流サークルSukaRela(スカレラ)「北海道の中高校生のための生物多様性多言語テキストの作成とワークショップの開催」25万円
- 後志管内ニセコ町・尻別川の未来を考えるオビラメの会「尻別川のイトウ繁殖地「見まもり隊」活動」10万円
- 上川管内美瑛町・大雪山マルハナバチ市民ネットワーク美瑛部「大雪山麓における特定外来生物オオハンゴンソウの分布と防除に関する取り組み」10万円
- 十勝管内池田町・十勝自然保護協会「阿寒富士西麓の森のアカエゾマツ林床における風穴、風穴植生等の調査研究及びその報告書の制作」20万円
杉本とき鳥類保護助成
- 札幌市・NPO法人札幌カラス研究会「身近な野鳥であるカラスとの共存・カラス対応マニュアル~北海道版2026改訂~」13万円
- 旭川市・繋ぐのは命プロジェクト「天売島探検隊」20万円
- 宗谷管内利尻町・利尻島ウミネココロニーについて考える会「ウミネコは育む利尻の海~絵本で伝える自然の繋がり~」20万円
2025年度助成事業
~北海道産いきもの保全プロジェクト~
日本動物園水族館協会に加盟している道内の動物園水族館の9園館は、持続可能な生物多様性の保全に向け、北海道に生息している野生生物の域内・域外の保全活動や自然保護を積極的に実施していくため、「北海道産いきもの保全プロジェクト」を立ち上げ、協働による取り組みを推進しています。当基金は、この北海道産いきもの保全プロジェクトに対する寄付から、同プロジェクト事務局に60万円を助成します。
- 札幌市・北海道産いきもの保全プロジェクト事務局「北海道産いきもの保全プロジェクト 北海道の野生生物の生態や自然保護についての教育普及啓発事業の実施」60万円
一般助成報告
道民参加型・道内爬虫類両生類分布一斉調査事業(ハープソンHokkaido2025)=北海道爬虫両棲類研究会
ハープソン(一般参加型爬虫類・両生類分布一斉調査)の実施目的は、道民が身近な両生類や爬虫類を観察し、親しむ機会を創出することにあります。
本事業では、道内各地から寄せられる観察情報を集約し、最新の分布マップを作成します。得られた知見は学術的な価値を持つだけでなく、研究会大会での発表や報告書の発行を通じて広く社会に還元されます。
北海道に生息する爬虫類・両生類の分布や生態に対する理解を広め、生息環境の保護・保全の基礎資料とすることを目指しています。また、こうした記録を長期にわたって積み重ねていくことで、野生の爬虫類・両生類の生息状況を把握し、将来的な環境保護や保全活動に資する基盤を提供します。

道内爬虫類・両生類分布一斉調査事業「ハープソンHokkaido2025」は、2025年4月1日から9月15日の期間で実施されました。参加者は各自で野外の爬虫類や両生類を観察し、そのデータを当研究会へと提出しました。これらの情報を活用した生息マップの作成に加え、2021年から2025年までの調査結果を統合し、「ハープソンHokkaido2021-2025結果報告書」を作成しました。
実施に際しては、SNSや会員ネットワーク、過去の参加者への呼びかけを通じて広く参加を募りました。参加者の居住地は札幌市などの人口集中域に多い傾向がありますが、実際の調査地点は道内全域の幅広い地域にわたり、広域的な分布状況を確認することができました。
2021年から2025年の調査には、のべ103チーム、合計310名が参加しました(2025年単年では29チーム、124名です)。参加層は10歳未満から80代までと非常に幅広く、北海道を10km四方で区切った2次メッシュで484区画(2025年単年では251区画)において調査が行われました。

●成果・結果
本事業の成果は、市民参加型の調査として定着し、年々データ蓄積量が増大していることです。確認データ数は、2015~2017年の638、2018~2020年の1136から大幅に増加し、今回の5年間では3381に達しました。2012年の開始以来、知名度が徐々に向上し、一部の参加者が例年継続して参画していることから、本活動が季節のイベントとして根付きつつあることがうかがえます。
集まったデータの数は、単なる分布情報に留まらず、在来種の現在の生息状況や外来種の分布推移を検討できる規模となっており、生物分布の基礎資料として極めて有用です。多くの参加者の協力によって、地域の自然環境の現状を把握する貴重な資料を作成することができました。
今後、北海道の自然界に変化が生じた際、その異変をいち早く察知できる「物差し」としてこの報告書を活用してもらいたいです。
大雪山系と日高山脈のトイレ問題解決に向けた取り組み=山のトイレを考える会
当会が発足した2000年ごろは、大雪山系、利尻山、羅臼岳などでは、登山者の排泄による汚物やティッシュの散乱、高山植物の踏み付けによる裸地の拡大など、目を覆う惨状でした。これを改善すべく25年間、取り組んできました。
私たちは改善のツールとして携帯トイレに着目しました。登山者に根気よく使用のお願いを続けてきました。トイレのない避難小屋や野営地には携帯トイレブース(以下 ブース)、登山口には携帯トイレ回収ボックス(以下 回収ボックス)を設置し、携帯トイレの使用環境改善を行政に働きかけました。
大雪山系の取り組み
(1)美瑛富士避難小屋では環境省が2015年~2019年にテント型ブースを設置して効果検証を実施しました。維持管理は北海道の山岳9団体(美瑛富士トイレ管理連絡会)が交代してボランティアで担いました。その結果、環境省で固定式ブースを整備し、し尿の散乱は激減しました。現在も点検パトロールやブースの冬囲い、冬囲い外しを継続して実施しています。

美瑛富士携帯トイレブース冬囲い作業
(2)トムラウシ南沼野営地にはブースが1基ありましたが、し尿の散乱は続きました。2017年~2019年に行政と山岳団体で「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト」を設立しました。改善に向け、現地で実態調査やアンケートを実施しました。その結果もう1基増設し、し尿の散乱は激減しました。
(3)裏旭野営地にもトイレがありません。2020年~2021年に山岳18団体の賛同を得て、「裏旭野営指定地携帯トイレ検討連絡会」を設立し、分担して実態調査とアンケートを実施しました。2022年3月に結果報告書として冊子にまとめて公表しました。環境省も2023年と2024年にブースを設置して効果検証業務を実施しました。ブース設置が必要との結論となりました。ブース設置に向け行政に働きかけていますが、維持管理の予算確保が課題として残っています。
(4)登山者への啓発活動にも長年取り組みました。山のトイレマップは2013年に制作し、登山者に配布してきました。2019年から宿泊施設、ビジターセンター、ロープウェイ会社等の協力を得て窓口に配備しました。毎年約7000部を7年間にわたり配布を続けてきました。2024年に沼ノ原大沼野営地にテント泊した時は、テント7張10人が全員持っていたことに驚きました。

トイレマップ
日高山脈の取り組み
(1)2022年~2023年に14か所の山小屋とトイレの実態を調査・公表しました。今年度は尾根や稜線及びカールに散在している小規模テント場でのし尿の散乱状況を調査することにしました。日高山脈は難度の高い山ばかりで、残念ながらカムイエクウチカウシ山の調査のみとなりました。5ヵ所のテント場を調査し、携帯トイレ1個、ティッシュ1個を回収しました。
(2)日高山脈でも携帯トイレの使用を行政、山岳団体等にお願いしています。今まで2ヵ所の登山口で回収ボックスが設置されていましたが、今年度はさらに3ヵ所が増えました。
(3)日高山脈のトイレマップを新たに2000部制作しました。日高山脈山岳センター等の情報センター、山岳団体、行政等に配布しました。
活動報告会の開催
2026年3月に札幌で2025年度の活動報告会を22名の参加者を迎えて開催。大雪山と日高山脈のトイレ問題の現状と最新情報について報告、意見交換により課題を共有化しました。

活動報告会模様

活動報告会集合写真
札幌の野生生物との共生をさっぽろラウンドウォークを歩いて知ろう・学ぼう2025=NPO法人ウォークラボ札幌
札幌市は人口約197万人の大都市でありながら、市街地近くまで自然が広がり、ヒグマやエゾシカなど野生動物と人とが近い距離で暮らしています。一方で、市街地への野生動物の出没や農業被害が増加しており、正しい理解と適切な対応が求められています。

SRW札幌の野生生物との共生イベント チラシ
本事業では、人と野生動物の摩擦を減らすために、札幌の外周約140kmを結ぶ「さっぽろラウンドウォーク(SRW)」を活用し、専門家の解説を受けながら歩いて学ぶ体験型環境教育を実施しました。
実施概要
7月21日(月・祝):真駒内駅~常盤橋付近、約8km
講師:小川巌氏(エコ・ネットワーク代表)/参加者17名
9月6日(土):宮の沢~西野市民の森(約6kmに変更)
講師:早稲田宏一氏(NPO法人EnVision環境保全事務所)/参加者18名
11月9日(日):(滝野すずらん公園付近~約7km)予定→大雪のため中止
11月15日(土):代替として座学を実施(小川巌氏)/参加者17名
合計3回実施(うち1回は座学)、延べ参加者数52名でした。

入林前の注意点の説明風景
学習内容と特色
フィールドワークでは、ヒグマやエゾシカ、キツネなどの痕跡を確認しながら、その生態や行動を学びました。

ヒグマの頭骨を用いたヒグマの生態の説明

ヒグマの好物・オニグルミ
ヒグマの餌となるミズナラ・オニグルミの識別や通り道の見分け方、開けた場所を嫌う習性、フン標本の観察・識別と感染症(エキノコックス)への注意、野外活動時の服装、蜂やダニへの対策などについて理解を深めました。座学では、ヒグマの行動特性や遭遇時の対応、クマスプレーの正しい使い方を学び、エコ・ネットワーク制作の教育用DVDを視聴しました。

クマスプレーの試射
参加者は、ヒグマに対する「臆病で人を避ける動物」という正しい理解を深め、不必要な恐怖感を軽減できました。また、痕跡やフンの識別力が高まり、感染症への正確な知識を身につけ、人と野生動物の適切な距離を保つ意識が育まれました。

さっぽろラウンドウォークの紹介
「自然と都市が隣り合う札幌」という環境を活かし、実際に現地を歩いて学ぶことで、人と野生生物の共生を具体的に体感できました。本事業は、野生動物に関する断片的な報道や憶測ではなく、専門家の現場解説によって正確な理解を得られる貴重な機会となりました。
今後も、さっぽろラウンドウォークを活用した体験型環境教育の場として、札幌の自然と都市が共に存在できる地域づくりを推進していきます。
スズラン群生地の保全のための環境ボランティア=NPO法人 自然教育促進会
かつてスズランは、道内各地に普通に分布していたのに、気が付けば今では希少植物のひとつになってしまいました。道内最大の都市・札幌市の花はスズランです。制定当時、郊外に行けばあちこちで見られた花でした。それが今では自生地がほとんど見られなくなってしまいました。他の地域でも同様です。

すずらん群生地
幸い平取町芽生の群生地は奇跡的に生き残り、5月下旬から6月上旬にかけての花期には可憐な花を咲かせ、多くの人が観賞に訪れる観光スポットとして知られるようになりました。
ところがスズランの花期は、ほとんどの植物が急速に成長する時期でもあり、他の草本との競争にさらされることになります。そのためスズランがこれら草本の陰になってしまい、見えづらくなってしまう個所が目立つようになりました。このような状態を改善しようと町民参加による侵入草本を除去する活動が始められるようになりました。
スズランの群生地は沙流郡平取町芽生に所在する町営の旧放牧野です。ここはかつて馬の放牧地として利用されていました。現在の群生地は約15haですが、放牧野の頃はもっと広かったと思われます。
群生地までは役場のある本町から車で約40分の距離にあり、平取ダムは間近の位置です。今日ではスズランの群生地として保護されていますが、以前は群生地内を自由に歩き回ったり、ゴザなどを敷いて食事したりした時期がありました。このためスズランの減少が目立つようになり、現在のように遊歩道から外れて群生地に入れないようにしてきました。またここへ関係者以外が立ち入れるのはスズラン観賞会の時期だけとなっています。

スズランはキジカクシ科に属する多年草です。葉は2枚で長さ約20~30cm、幅5~6㎝です。酸性の強い火山灰地でしばしば群生します。公園や家庭の庭などに植えられているのは、ほとんどがドイツスズランで、在来のスズランより大ぶりな上に花穂が葉の先端まで伸びる点で区別できます。
生育環境は日陰になって暗くなる林内ではなく、ササや丈の高い草などが繁茂していない開けた場所に限られます。このような環境は安定した状態で永続することはなく、自然の推移に任せておくと、いずれササやススキなどの高茎草本が侵入し、やがて林のような環境に変化していくと考えられます。そのため、スズランを保全するには人の手による管理が欠かせません。
企画は花期の少し前に、札幌、小樽を中心とした市民参加型の環境ボランティアとして実施されました。さらにスズランの最盛期にあたるスズラン観賞会の期間中に侵入草本の抜き取り効果を確認するための調査も行いました。
2025年5月20日。現地到着後、作業手順を説明してから直ちに作業にかかってもらいました。場所は入口右側のメイン観賞歩道の右側としました。範囲は遊歩道から2mくらいを手入れする範囲と指示したものの、作業が進むにつれ数m、所によっては10m近くに及んでしまいました。

作業開始
スズランの群生地に入るのですから踏みつけないよう、細心の注意を払いつつ、ヨモギ、カラマツソウを始めとした侵入草本の抜き取りに精を出しました(侵入草本の種類については後述します)。抜き取るとはいえ、単純に引き抜ける種類は少ないです。特に多いヨモギは根が数十㎝の長さになっていることが多いため、根を全部除去するのはかなり面倒です。一部でも残してしまうと翌年以降、そこから発芽してしまうからです。
ササが小規模ながら侵入している場所もあります。ササは地下茎が発達していて全摘出は困難な場合が多かったです。ススキも同様にかなり厄介な存在です。これらの種については別の時期に対処する必要があるでしょう。20人のボランティアが一丸となって進めた結果、昼までにはかなりすっきりしてきました。とはいえスズランを踏みつけないように気配りしなければならず、楽とは言えない作業でした。
5月29日、平取町主催のスズラン観賞会の期間中で、しかも好天に恵まれたせいもあって、多くの来場者が詰めかけていました。私たちの行ったスズラン群生地における侵入草本の除去作業は群生地全体の一部ですが、鑑賞に訪れる人たちがもっとも多く通る場所でした。それだけにその効果が大いに気になるところでした。私たちが作業したエリアを中心に観察しました。ひと言で言えば、抜き取りの効果は明らかでした。作業区域は余計な草本がほとんど見当たらないだけに、全体がすっきりしていました。個々のスズランも他の場所と比べて大きく育っているように見受けられました。それは遊歩道を挟んで向かい側の抜き取りをしていないエリアと比較すれば一目瞭然でした。非作業区域は侵入草本がかなり大きくなっていた上に、全体的にスズランが隠れてしまって見えづらくなっていました。やはり当初から主要な侵入草本とみていたヨモギとカラマツソウが特に目立ちました。


これは群生地全体に言える傾向でした。今後は、侵入草本を除去した区域の良好な状態がどの程度持続するか、経年的に確認することが課題です。

参加者全員
野生動物と共存する“地域の力”育みプロジェクト=たきかわ環境フォーラム
事業の目的
無人で稼働する自動撮影カメラ(トレイルカメラ)を市内の林道脇の定点に設置し、野生動物モニタリングを実施しました。得られる情報を近隣住民と共有しながら、野生動物とのあつれき回避につなげたいと考えました。
実施の様子
・自治体の許諾を得て、滝川・赤平・深川の各市境界に近い林道に赤外線センサー付きの自動カメラを設置し、北海道滝川高校理数科の長澤秀治・生物教諭(たきかわ環境フォーラム運営委員)が撮像データを解析しました。
・クマとのあつれきが道内各地で顕著となった2025年、自然愛好家向けにクマ撃退スプレーの実践的トレーニングを初実施し、その模様をショート動画にまとめてウェブで公開しました。

活動のようすを動画にまとめ、公開しています。
https://ecoup.la.coocan.jp/
・12月には「たきかわエコフェスタ2025 野生動物と共存する地域の力を育もう」を開催し、活動成果の共有と意見交換を図りました。

ワークショップで議論する「たきかわエコフェスタ」参加者たち
◎成果
・9カ月にわたり滝川市江部乙町19丁目林道で定点観測を実施し、市内の野生動物の出現状況を把握しました。
・「飛び出すエコカフェ」では、模擬スプレーを用いたクマ撃退トレーニングを実施し、のべ20人あまりが参加。実物大パネルを使った臨場感ある体験が好評でした。
・「たきかわエコフェスタ2025」には約60人が参加し、基調講演・報告・グループ討議を通じ理解と意識の共有を深めました。

「たきかわエコフェスタ」で
基調講演する山本牧さん

「たきかわエコフェスタ」で
報告する米内健二さん
こうした取り組みが評価され、「2025年度・未来へつなぐ!北国のいきもの守りたい賞(北海道生物多様性保全実践活動賞)」を受賞しました。次年度以降も市民レベルのモニタリングを継続し、情報共有と意見交換の場づくりを進めていく予定です。
北海道の中高校生のための生物多様性多言語テキストの作成とワークショップの開催=国際交流サークルSukaRela(スカレラ)
はじめに
国際交流サークルSukaRelaは、2006年に酪農学園大学に創立された国際交流と自然環境の保全を目的とした学生サークルです。語学を習得したいという学生から、海外で自然環境の保全に取り組みたい学生、将来海外で働きたいという学生まで、様々な動機を持ったメンバーで構成されています。現在、酪農学園大学は、2026年4月現在、24カ国・45機関と協定を結び、多くの留学生が学んでいます。
私たちはそのような留学生に対して、学内の施設案内、よさこいソーランへの参加、弓道、柔道、着付けといった日本文化体験等のサポートなどを行っています。また、語学に興味のある学生に対して外国語勉強会(現在は英語および中国語)を開催してきました。
酪農学園大学に来られる留学生のうち、特に、マレーシアのサバ大学とは関係が深く、2011年には学術交流協定を締結し、学生及び教員の交流を続けています。
サバ大学から来られる学生は、主に、生物多様性の保全を学ぶ学生達が多く、毎年、6か月間のインターンシップ研修を行っています。2025年度も5人の学生が来学しました。
このため、私達は、彼らと協働して、北海道の学生向けに北海道の生物多様性保全のための英語版のテキストを作成するとともに、中学生、高校生、大学生と、日本とマレーシアの自然や文化について交流するワークショップを開催しました。
生物多様性保全テキストの作成
私達は、サバ大学の学生、酪農学園大学の留学生とともに、北海道の生物多様性を紹介するテキスト(Life in The North: Discovering The Biodiversity of Hokkaido(北の生物:北海道の生物多様性探訪))を英語版で作成しました。以下に表紙と目次を示します。

北海道の生物多様性保全テキストの表紙、目次
内容としては、地理・気候の概要を解説した後、生物多様性の重要性を述べ、北海道の植生、河川、湿地、海洋、山岳の特徴を述べています。またアイヌの人達の自然資源の活用についても解説しました。さらに、北海道の絶滅危惧種、地域の生物多様性に対する脅威、保全活動を紹介しました。

北海道の絶滅危惧種とアイヌ文化の紹介
中高生・大学生とのワークショップ
この生物多様性テキストを作成すると同時に、北海道の各地を訪問し、日本とマレーシアの自然と文化に関するワークショップを英語で行いました。訪問地は、江別市(酪農学園大学、とわの森三愛高校)、せたな町(北檜山中学校)、羅臼町(羅臼高校)、浜中町(霧多布湿原(酪農学園大学の学生とのワークショップ)などです。







まとめ
英語版の生物多様性保全テキストを作成し、北海道の学生が、英語で北海道の自然や生物について紹介することが可能となりました。また、ワークショップを通じ、留学生たちがマレーシアの自然と文化を紹介しつつ、マレーシアと北海道の気候を比較し、両地域の生物多様性の違いを分かりやすく英語で解説してくれたことにより、この比較を通じて、気候の違いが地域の生態系や生物種にどのような影響を与えるかを示し、気候変動問題や生物多様性保全の重要性に対する理解を深めることができたと思います。
尻別川のイトウ繁殖地「見まもり隊」活動=尻別川の未来を考えるオビラメの会
事業の目的
イトウは日本列島最大級の淡水魚です。羊蹄山(マッカリヌプリ)の北側の山麓を縁どるように流れる尻別川は、野生イトウの生息南限です。かつてイトウ釣り師たちが「メッカ」とも呼んで憧れた尻別川ですが、とりわけ1970~90年代の大規模な河川工事などの影響を受けてイトウは急激に数を減らし、文字通り「幻の魚」になってしまいました。

繁殖地の川岸に、イトウ保護を呼びかける看板を取り付ける
地元のイトウ釣り師たちに生態学者たちが加わった「オビラメの会」は、1996年の発足以来、科学的・社会的なアプローチで、個体群の復元をめざしています。広大な流域内にわずかに残る貴重な自然繁殖地を保護するために、2011年から繁殖期に合わせて、ボランティアによる24時間体制の「見まもり隊」活動を続けています。なお、「オビラメ」とは地元の釣り師たちが他の川のイトウと区別して尻別川のイトウを呼ぶ時の名前で、アイヌ語でイトウのことを指す「オベライペ」という名に由来していると、伝わっています。
実施の様子と、その成果

イトウ繁殖地を見学に訪れた地元小学生たちを案内する川村洋司事務局長
イトウの繁殖期にあたる春の融雪増水期にあわせ、倶知安町内の自然繁殖支流で、産卵のために尻別川本流から遡ってくる親魚のモニタリングと、侵入者(釣り人、撮影者など)による脅かし防止などを兼ねた「見まもり」活動を行ないました。モニタリングの結果によれば、今季の親魚初確認は2025年4月18日(オス2尾)で、5月11日までの24日間に延べ47尾(オス35尾、メス12尾)、計10回の産卵行動を目視確認しました。

当会はこの見まもり隊活動を、河川管理者や地元自治体と協働しながら、2011年から毎シーズン欠かさず実施しています。河川管理者から河川敷占有許可を得て、レンタルしたコンテナハウスと移動式トイレを設置し、ボランティアの見まもり隊員の滞在、また見学者への情報提供の拠点にしました。さらにパトロール省力化のために、河畔に赤外センサーつきの自動撮影カメラ2台を設置し、携帯電話回線経由の自動発報装置と組み合わせて、撮影映像をリアルタイムでモニターしました。

「見まもり隊」隊長の足立聡さん(右)と川村洋司事務局長
期間中の見まもり隊出動人数はのべ87人でした。また、地元の倶知安小学校、喜茂別小学校の児童たちの見学授業を含めた見学者数は94人でした。
この成果は当会発行のニュースレターに詳しく掲載しており、ウェブサイトでも公開しています(https://obirame.sakura.ne.jp/index.html)。

2025年シーズンの尻別川イトウ繁殖地「見まもり隊」活動に加わったオビラメの会の会員・サポーターたち
大雪山麓における特定外来生物オオハンゴンソウの分布と防除に関する取り組み=大雪山マルハナバチ市民ネットワーク 美瑛部
特定外来生物セイヨウオオマルハナバチの防除と在来マルハナバチ類のモニタリングを活動の中心としている当団体では、マルハナバチ閑散期や開花期等適期に特定外来生物オオハンゴンソウの分布把握と防除手法の確立も検討しています。現地での防除試行、関係者へのアプローチ、事例視察といったフィールド活動を中心に実施しました。
具体的には、他団体の公園内林床植生保全への取組見学と交流(6月29日、旭川市神楽岡公園)、十勝岳連峰周辺山麓の道路周辺でのオオハンゴンソウ開花状況調査と開花確認日の展示用マッピング、レク休養施設管理者への聞き取りおよび活動PR(10月4日、旭川市21世紀の森)、道路維持管理作業の見学と付帯設備の観察(夏〜秋)、地元官庁への聞き取り(冬)等を行いました。

継続観察植物群落に入ってきたオオハンゴンソウ
オオハンゴンソウの防除(抜取り)着手は、当団体のモニタリングエリア内の観察植物群落に侵入が始まったことや、山林側の在来種オオウバユリが明らかに減り丈も低くなったことなど、植生がオオハンゴンソウへ一気に置き換わりそうな状態になったためです。

カンバやオオイタドリで大発生中のコガネムシ類
原因はオオハンゴンソウ自身の旺盛な増殖能力に加えて、周辺の木本(カンバ類)や草本(オオイタドリやセリ科高茎草)が植物食昆虫(コガネムシ、アブラムシ)の大発生により成長抑制された影響も看過できません。観察植物群落内に飛び火的に入ったオオハンゴンソウの開花茎は夏~秋にかけて毎週定期的に手鎌で根の切取を行いましたが、次回までに伸び、丈が低くなりながら開花蕾まで付けるのが数回にわたって観察されました。10月に入って道具を手鍬に持ち換えて根を掘取った後は伸びなくなりましたが、日照時間や低温の影響もありそうです。この群落はマルハナバチの観察重点でもあり、次年へ観察を継続します。
オオウバユリについては、林縁でふつうにみられる高茎草本でしたが、一昨年位から明らかに減少しています。残った株も草丈が低くなり、花も矮小となりました。林縁側のオオハンゴンソウ根の掘取りを行った際に、縮小した球根が横から出てきたのを確認しました。オオハンゴンソウは道路法面で旺盛に繁茂し、相当な数の種を毎年つけていますが、横の針広混交天然林床には一本も芽生えが見られません。森林と林床植生による結界なのか、なぜ入れないのかは興味深く、オオハンゴンソウはかき起こした土地に強みがあることが改めてわかります。

オオハンゴンソウ初期侵入株を開花期に発見し、登山のお天気待ち時間に抜き取りを行った
2025年は、これまでのモニタリングエリア及び防除範囲を縮小し、登山口付近の道路法面から重点的に行いました。マルハナバチの登山道モニタリング(2025年6~9月:12回実施)前後の機会を活用し、登山口付近や山岳道路沿いの初期侵入の抜き取りを行いました。また、開花時期の花色が目に付き森林内への侵入状況まで確認できたため、初期侵入分について優先実施しました。森林内への侵入事例については、ア.遊歩道入口周辺に株が入った事例、イ.渓流工作物周辺での水分土壌に生えている事例、ウ.山岳道路沿いの柳等2次林床に生えている3事例を確認しました。ア.は数株程度で短時間で根から掘り取りました。イ.渓流沿いは水分土壌で植物本体も軟弱なため手で容易に引抜きできましたが、法面部分は固く手鍬を使いました。ウ.はヒヨドリバナ他の在来植生と混生しており、オオハンゴンソウ一色に置換わる前の対応が望まれますが、山岳道路の冬季閉鎖に間に合わず持ち越しとなりました。森林管理署より国有林分内は外来種防除でも入林届出が必要と指導を受け、ア.イ.いずれも手続きを行いました。

茎と葉を裁断して叩き、網ザルに入れて水中で均して引き上げ、水分を取った状態
オオハンゴンソウを手で扱ってみると、虫食いが見られず、棘もなく、粘着もないため、素手でもさほど抵抗感はありません。なるほど防除活動の対象にされるほど素人にも取組みやすい植物のように思います。虫ばかりでなく動物も食わないようで、食痕も見かけません。エゾシカが食べないと聞いたことがあり、この性質を有用資材として活かせないか、無い知恵を絞るより近郊に出かけてみました。旭山動物園の飼育係からは「ヒグマも食べない」「自分たちの知る範囲でオオハンゴンソウを忌避剤になどの資材化の相談を受けたことはない」という情報を得ました。ホームセンターで扱っている鳥獣用忌避剤商品は、見たところ木酢液などの木質由来のようです。
厚紙のようなものにならないかやってみました。植物本体(茎葉)をハサミで細かく裁断し、すりこ木で潰し、水中で漉きましたが、オオハンゴンソウ100%ではバラバラになってしまいます。また水で漉くと成分(汁)が流れ出てしまいます。そこで、新聞広告誌で掲載されていた紙漉き工房「エゾ和紙コース」のワークショップを体験しました。草本を部分的に採用した和紙づくりの行程は繊細なもので、外来植物や刈草などの廃棄物再利用的な発想ではないことがわかりましたが、木質材料の重要性について等参考になりました。妙案はまだ出ませんが、今後の活動の中で、忌避資材化も頭の隅に置いて、機会を待ちたいものです。
阿寒富士西麓の森のアカエゾマツ林床における風穴、風穴植生等の調査研究及びその報告書の制作=十勝自然保護協会
実施主体
十勝自然保護協会は1971年に設立されました。十勝の自然環境の保全、保護育成につとめ、生活と文化向上に貢献することを目的として活動しています。
今、力をいれている活動は、大雪山、日高山脈、阿寒摩周と、十勝を囲む国立公園の自然を守ることです。いずれにもその地域特有の貴重な自然があり、人間の開発行動から守り次世代に引き継いでいきたいと活動しています。

ピットフォールトラップ調査(地上徘徊性昆虫)の回収作業
事業の目的
阿寒摩周国立公園阿寒富士西麓の森の貴重さはほとんど知られていませんでした。当会は、2017年頃から自然探索を始め、その植生の特徴、独特な地形、風穴の存在、景観のすばらしさを認識してきました。アカエゾマツを主体とする林内に、低標高でありながらイソツツジ、コケモモなど高山性の植物が繁茂し、蘚苔類も森林性のミズゴケ類が多く、凍土の存在が推測される地域です。これまで調査はほとんど行われておりませんでした。
2022年に、佐藤謙氏(北海学園大学名誉教授)の植生調査、乙幡康之氏(ひがし大雪自然館学芸員)の蘚苔類調査に同行し、2023年に事前調査をし、2024年に、第2種特別地域を含む国有林で、風穴と風穴による低温湿潤な環境に依存した特殊な植生や蘚苔類の調査を3人の専門家(清水長正氏、指村奈穂子氏、乙幡康之氏)に依頼し、共に調査しました。
2024年の調査によって多くのことが見えてきました。阿寒富士から流下した玄武岩質溶岩による複数の凹地において低温環境が確認され、さらに冷風穴・温風穴が地下で通じている可能性もでてきました。風穴の低温と複雑な地形の狭い範囲内に多様な植物が生育している特徴があげられました。蘚苔類では、ゴレツミズゴケなど北海道で希産種とされる種が3種確認され、うち2種は阿寒摩周国立公園では初確認種であることが報告されました。ここは極めて珍しい自然環境をもつ地域であるということが確認されました。

風穴を含む凹地底部におけるコドラート調査
実施の様子
助成事業は下記の課題を中心に研究者と会員の協力を得て、延べ19日にわたり行いました。

風穴の地温-0.2℃。真夏でも0℃近い地温でこの地域には凍土の存在が推測される
・風穴(地形・気温地温・温風穴):清水長正氏
・風穴周辺の森林植生:塚田晴朗氏
・ピットフォールトラップ調査
地上徘徊性甲虫:須田修氏
クモ類:松田まゆみ氏
ムカデ類およびヤスデ類:開澤菜月氏
両生類:乙幡康之氏
・花粉分析による植生遷移:星野フサ氏・萩原法子氏・春木雅寛氏
・地層内の植物遺体:乙幡康之氏
杉本とき鳥類保護助成報告
身近な野鳥であるカラスとの共存・カラス対応マニュアル~北海道版2026改訂~=NPO法人札幌カラス研究会
事業の狙い
当会は2017年からカラスマニュアルを作成しており、当初は自治体向けでしたが、現在は広く一般にも配布しています。カラスの生態を理解してもらい、より良い共存を目指せるように活用していただけたらと思います。

内容
当初、この冊子は一般向けの配布目的ではなく自治体担当部署への配布でしたが、市民などからの希望も多く、現在は無料で配布し、施設などへ設置してもらっています。
実際に当会に寄せられた相談や調査記録に基づく内容を中心に作成しています。
カラスの相談は全国から寄せられており、3月下旬から7月中旬にかけて最も多く、そのほとんどが「繁殖期のカラスの行動」や「保護」に関するものです。繁殖期に向けて、自治体や市民のカラス対応の参考にして頂けるとより良い共存が可能と考えています。今後も改訂や追記をして発行したいと思います。
当会の活動
当会の活動についてご報告します。2025年5月に画廊喫茶で写真展を開催しました。期間中に紀伊國屋書店にて「札幌のカラスを語る」のトークショーを開き、約120名の方にご参加いただき大盛況でした。

札幌のカラスを語る 紀伊國屋書店札幌本店
日本鳥学会2025年度札幌大会では「札幌圏の20年間に及ぶカラス類のねぐら状況と人との関わりについて」というタイトルで口頭発表を行ったほか、高校生企画の講師や自由集会での話題提供などにも参加いたしました。
円山動物園開催の「アースデイ」にも参加をして、啓発活動を行いました。その際に「カラスマニュアル」を配布しています。アースデイではオリジナルグッズの販売を行い活動費に充当しています。オリジナルグッズの作成はボランティアの皆様がご提供いただきました。

アースデイ・円山動物園
2025年8月には大阪でのイベントへの依頼があり、札幌のカラスの魅力についてお話ししました。その他に講師依頼もありカラスの基礎講座を開催いたしました。
2026年3月1日には札幌市・NPO法人TSUNAGUとの共催で「カラスとヒグマとヒトとの交差点」というタイトルでトークショーを開催し、餌付けが及ぼす影響について考えていただく提案をいたしました。意図的な餌付けと意図しない餌付けが存在していて、野生動物を引き寄せ、人とのあつれきを生みだしているということを考えていただきました。他団体との共催イベントはこれからも継続して行きたいと思っています。
日々の活動として、カラスの定点行動調査、生息数を把握するためのねぐら調査、マスコミからの取材対応やラジオ出演などを通じ、啓発活動をいたしました。全国からカラスに関する相談も多く寄せられており、対応しています。他団体などからの話題提供や執筆依頼もありました。
天売島探検隊~海鳥の楽園で学ぶ生物多様性~=繋ぐのは命プロジェクト
令和7年7月26日から27日の2日間、北海道苫前郡羽幌町の天売島において、親子を対象とした自然体験活動が実施されました。主に旭川市から参加した5組17名(大人9名、子ども8名)が、島の豊かな自然環境と野生生物とのふれあいを通じて、生態系や生物多様性への理解を深めることを目的として活動を行いました。

赤岩展望台
赤岩展望台では海鳥の観察を実施し、天売島に生息するウミガラスやウトウなどの生態について理解を深めました。また、黒崎海岸では海岸生物の観察を行い、専門ガイドの解説のもと、潮間帯に生息する生き物の特徴や役割について学習しました。そのほか、自然素材を活用した体験活動や、活動の振り返りを行い、学びの共有を図りました。

集合写真(フェリー前)
人口約240人の小さな島、天売島には、毎年約100万羽の海鳥たちが繁殖のために集まります。断崖に巣をつくるウミウやケイマフリなどの姿を間近に見た参加者たちは、命の営みの厳しさや、繁殖のための仕組みに心を動かされていました。

野鳥のヒナ
時には命を落とした雛の姿に立ち止まり、自然の過酷さを受け止める場面も。講師の寺沢孝毅さんからは、現在の人間の暮らしがいかに地球環境に影響を与えているか、また海鳥たちにもその影響が及んでいることが伝えられ、子どもたちは目を丸くして話に聞き入っていました。

浜遊び
海辺では雨の中でも海遊びを楽しみ、カニや貝、海藻、漂着物を観察。卵を抱えたカニに出会い、宝探しのように拾った貝殻について、後で図鑑を使って調べる姿も見られました。こうした経験は、ただ「楽しかった」で終わらず、自分の暮らしと自然がつながっているという実感を育むものと思われます。

海洋プラワークショップ
天売島での2日間の体験を通じて、参加した親子は自然保護への関心を高め、生物多様性の大切さを実感する貴重な機会となったのではないでしょうか。
ウミネコが育む利尻の海~絵本で伝える自然のつながり~=利尻島ウミネココロニーについて考える会

利尻山とウミネコ
利尻島では、長年にわたりウミネコと人のあいだで軋轢が生じており、人為的な理由によってウミネコがけがをしたり、死亡したりする事例も見られます。ウミネコは2019年に北海道の準絶滅危惧種に指定され、さらに2026年からは環境省の絶滅危惧種に選定されるなど、近年その数の減少が懸念されています。利尻島のウミネコ繁殖地は国内最大級の規模を誇り、効果的な保全のために極めて重要な地域です。
当会ではこれまで、講演会や報告会を通じて島民の理解を深める活動を行ってきましたが、子どもたちを対象とした取り組みは十分ではありませんでした。そこで今回、ウミネコの保全と共存の促進を目的として、利尻島のウミネコを主人公にした子ども向け絵本を制作しました。
2025年5月には、やじまさくら氏を利尻島に招き、ウミネココロニーでの繁殖の様子をスケッチしていただきました。やじま氏の来島期間以外については、会のボランティアメンバーが随時写真や動画を撮影し、繁殖状況の記録と共有を行いました。繁殖期が落ち着いた秋頃からは、オンラインで絵本の構成を検討する作業に着手しました。
当会にとって絵本制作は初めての試みであったため、構成検討の段階から幼稚園教諭やデザイン会社の方々に、ボランティアでご助言をいただきました。また、制作過程では知人家族に試作版を配布し、子どもの理解度や保護者にとっての読みやすさについて検証を重ねました。
絵本の仕様については、当初はソフトカバーを想定していました。しかし、幼稚園教諭への相談の結果、長期利用にはハードカバーが適しているとの助言を受けました。当会としても、子どもたちに長く読んでもらいたいという思いから、最終的にハードカバーで制作しました。
印刷費の増加に伴い、配布方法は郵送ではなく手渡しとしました。完成した絵本は、利尻島内の子どもたちや未就学児が利用する公共施設へ無償配布しました。さらに、早稲田大学野生動物生態学研究室より追加の資金援助を受け、その費用を活用して、当会の拠点がある埼玉県所沢市の幼稚園にも配布を行いました。

絵本の表紙
絵本を読んだ家族からは、「利尻島のウミネコが日本最大級の繁殖地であることを初めて知った」「ウミネコの糞が栄養となっていることを知った」「利尻島でのウミネコの暮らしが分かり興味深かった」など、多くの前向きな感想が寄せられました。
一方で、印刷部数が限られていたため、すべての希望者に配布することはできませんでした。今後は資金確保を進め、増刷を行うことで、より多くの施設や家庭への普及を目指しています。

読み聞かせの様子
北海道産いきもの保全プロジェクト 2025年度助成事業
北海道産いきもの保全プロジェクト
北海道産いきもの保全プロジェクトは、北海道内の9つの動物園・水族館が連携し、道内に生息する野生動物の保全や調査研究、教育普及を進める共同事業です。傷病鳥獣への対応、飼育下繁殖や遺伝的多様性の確保のほか、各園館が協力して野生動物に関する情報共有や啓発活動を行い、地域と自然が共に生きる社会づくりを目指しています。本年度は3つの事業を実施しました。

第19回アースデイ in 円山動物園
(令和7年6月21日・22日)
北海道産いきもの保全プロジェクトとしては初めての出展となったアースデイでは、各園館が個性豊かなワークショップを展開しました。AOAO SAPPOROの「おさかな帽子づくり」、千歳水族館の「サケ皮しおり」、釧路市動物園の「生態系ジェンガ」、登別マリンパークニクスと円山動物園による「動物ペーパークラフト」など、来園者が体験を通して楽しく学べる内容でした。

ブース全体の様子
また、NHK札幌放送局の協力によるヒグマVR体験も実施され、2日間で353人が体験。多くの市民が北海道の自然についての学びを深めました。当日は募金活動も行い、合計72,601円の支援をいただきました。園館職員や学生ボランティアが協力し合い、プロジェクトとしての一体感が生まれたイベントとなりました。

生態系ジェンガ(釧路市動物園提供)の様子
あにまる・ハッピー・マーケット in 旭山動物園
(令和7年9月20日・21日)
3年連続の出展となり、プロジェクトの認知度が大きく向上しました。「チリモンを探せ!」「エゾシカ皮チャームづくり」「動物の食べ方を知ろう!」など、楽しみながら学べるプログラムが多くの来園者に好評でした。また、加盟園館の紹介や動物クイズを通して、各施設の特色を伝える情報発信も行いました。

いきもの保全プロジェクトブース(手前が募金ブース、奥がワークショップブース)

エゾシカ皮チャームを作ろう!の様子(説明中)
募金は合計66,988円となり、来場者からの温かい支援が寄せられました。円山・旭山両園だけでなく、道内各地の園館にも関心を持ってもらうきっかけづくりが今後の課題として挙がりました。
猛禽類医学研究所×北海道産いきもの保全プロジェクト「羽根で学ぶ、鳥のこと。with ZOO & Aquarium」
(令和7年6月~令和8年3月)
初めての域内保全団体とのコラボ企画として、猛禽類医学研究所と協働した巡回展示を道内9園館で開催しました。各園館の地域特性や生息環境に合わせてテーマを設定し、釧路市動物園では「釧路湿原の鳥類」、小樽水族館では「北海道沿岸の海鳥」、旭山動物園では「夏鳥」、円山動物園では「冬鳥」など、多彩な切り口で構成されました。
釧路市動物園ではInstagramライブ配信を通じたオンライン解説、AOAO SAPPOROでは研究員によるトークイベントも実施。羽根の構造や種類、鳥類の生態について専門的な知見が紹介されました。
展示に使用された羽根はすべてロードキル等で失われた野鳥の個体から提供されたもので、人の暮らしと野生生物の関わりを考える契機になりました。およそ30万人を超える来園者がこの展示を訪れ、羽根一枚から自然と人とのつながりについて深く学ぶ機会となりました。

AOAO SAPPORO
「綺麗で個性豊かな羽をもつ鳥類」

釧路市動物園
「釧路湿原に生息する鳥類」

新さっぽろサンピアザ水族館
「北海道の沖合に生息する海鳥」
令和7年度は、道内の動物園・水族館が連携して多角的な普及啓発を展開し、野生動物保全の重要性を多くの人に発信できた一年でした。各園館がそれぞれの強みを活かしつつ、一体となって活動を進めることで、北海道の自然を次世代へ受け継ぐ取り組みが一層広がっています。

