自然・環境出前講座

 北海道新聞野生生物基金は、北海道の自然と野生生物を守る大切さを訴え、広く周知するため、全道各地の小中学校・高校・大学や市町村の講座などに評議員の講師陣らを派遣する「自然・環境出前講座」を実施しています。以下に出前講座の実践例を紹介します。派遣の希望がありましたら、ご相談ください。

2025年 由仁町高齢者大学「アカデメイア・ユニ」

 由仁町教育委員会からの要請で、同町の健康元気づくり館において、高齢者大学「アカデメイア・ユニ」在学生を対象として開催しました。同学の今年の学習テーマである「空知」を学ぶ一環で、隣町の長沼町について学んでもらっています。長沼町は、特別天然記念物のタンチョウが生息しており、同町の自然も含めて知識を深めてもらいました。講師は、道内の野鳥に詳しい環境市民団体・エコネットワークの小川巌さんで、タンチョウのお話しから小川さんが主宰するエコネットワークの活動まで幅広く紹介してもらいました。


長沼町や道央地域の生息域を紹介する小川さん

 タンチョウは羽を広げると2メートルを超える大きさであることや、生息域が道北、道央にまで広がって長沼町の舞鶴遊水地に定着した事実と、それに伴う課題も説明されました。


講座風景

 参加された学生さんたちからは「タンチョウを育てることの大切さを知った」「共存するといろいろな問題が出てくることを知った」「実際に遊水地でタンチョウを見てみたい」といった感想が寄せられ、大変好評でした。

2024年 大空町・大空高等学校


大空町・大空高等学校での講座風景

 釧路管内東藻琴町の大空高等学校で、自然・環境出前講座「酪農学園大学と旭山動物園が取り組むマレーシア自然環境の保全」と題して、マレーシアサバ州で実施している野生動物の保全活動について、講演を行いました。講師は、酪農学園大学・名誉教授の金子正美さんで、酪農学園大学非常勤講師のキューイーホンさん、マレーシア国立サバ大学からの留学生4名も参加して、マレーシアの自然や文化についての交流を行いました。
 講演では、マレーシアが直面している野生生物の生息地が分断、減少している現状と原因について触れ、保全活動の難しさを説明しています。こうした学びから、北海道の自然や野生生物の保全にも興味と理解を持ってもらえればと思います。

2017年 苫小牧市民活動センター

 旭川市旭山動物園で動物たちの「行動展示」を実践したことで知られる評議員の坂東元園長が11月30日、北海道消費者協会のエゾシカ連続講座の一つとして招かれ、苫小牧市民活動センターで「北海道の野生生物と共存する社会の姿とは」と題して講演しました。


おなじみの作業服姿でエゾシカとの共存策を講演する旭山動物園・坂東元園長(現在は統括園長)

 市民ら約50人が詰めかけた講演会では、坂東元園長は自ら狩猟免許を取得したことで全国から「動物園で働く者が命を奪うのか」などと批判を浴びた経験も紹介。「エゾシカは年間約14万頭が駆除されている。オオカミを絶滅させるなど、私たちの営みが結果としてエゾシカを増やし、害獣にしてしまったことこそが人間の罪深さ。しかも奪った命の9割はごみとして捨てられている。命を奪っていることを心に刻み、死を見つめるきっかけにしたい。食文化を育ててこそエゾシカを大切に思うことにつながり、共存の未来が見えてくる」などと話し、市民らの共感を呼んでいました。