2025年 第31回北海道野生生物写真コンテスト入賞・入選作品
公益財団法人北海道新聞野生生物基金、北海道新聞社主催の第31回北海道野生生物写真コンテストの入賞・入選作が決まりました。
応募総数は動物、植物両部門合わせて前年より142点多い577点になり、動物部門は466点の中から1席には宗谷管内豊富町の前田賢一さんの「夕暮の雪原を走る」が、植物部門は111点の中から1席には札幌市の横江憲一さんの「カムイ 天上に咲く」が選ばれました。入賞・入選作の全作品は下記の通りです。
入賞・入選の作品展は2025年10月31日(金)~11月5日(水)、富士フイルムフォトサロン札幌(札幌市中央区大通西6丁目1番地 富士フイルム札幌ビル1階)で開かれました。
| ◇応募作品総数 | 動物部門466点+植物部門111点= 合計577点 |
| ◇入賞・入選作品 | 32点(動物入賞7点 入選10点 植物入賞4点 入選10点 U30特別賞1点) |
| ◇主催 | 公益財団法人北海道新聞野生生物基金、北海道新聞社 |
| ◇審査委員 (敬称略) |
寺沢孝毅、奥田実、小川巌、中井和子、西村昌晃、川村公人 |
動物部門(応募総数466点)
動物部門講評 審査委員長 寺沢孝毅
1席の「夕暮の雪原を走る」は、何というドラマだろう。空が朱に染まりはじめ、全容を現す冬の利尻山が銀波に浮かぶ絵のような風景のなか、エゾシカが群れで青い雪原を駆け抜けた。作者はその幸運を逃さず秀作として記録したことが素晴らしい。これぞ自然写真の醍醐味である。
2席の「綱渡り」は、オカモノアラガイと2本の茎の曲線が、画像内にバランスよく配置されている。背景の玉ボケをセンス良く取り込み、ほどよく入った赤い色彩も効果的だ。「羅網鹿」は、エゾシカの災難を記録したメッセージ性のある作品だ。このエゾシカは、春に角が脱落するときロープから解放されるが、人間がつくったものが野生生物に危害を与える事例が後を絶たず、私たちはそれを忘れてはならない。
3席の「朝日を浴びる白鳥」は、手前から奥へ多数が連なるオオハクチョウ、低い太陽がつくる影に目が留まる。広角レンズによる撮影が功を奏した。「にぎわう森の定食屋さん」は、パッと華やいだミドリヒョウモンなどの蝶が目を引いた。蝶のオレンジ色を周囲の色彩が引き立て、バランスよく切り取ることができた。「虹色の羽」は、シマエナガの羽ばたきを、翼を広げたタイミングでピタリと止めて切り取った。羽の先端の一枚一枚まで鮮明で美しい。
鮫島和子賞の「静寂の貴婦人」は、背景を暗くし、ダイサギの白を際立たせた。広がった飾り羽が被写体の美を強調している。
U-30特別賞の「木漏れ日」は、エゾフクロウの目に入る1点の光が作品の生命線だ。鋭い眼光が野生に生きるものの気高さ、尊さを伝えている。縦に切り取ったことも成功している。10歳の少年の作品で、感性が素晴らしい。
| 入選作品 (10点) |
氏名 | 住所 | タイトル (動物名) |
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|---|---|---|---|---|
| 優秀作 | ![]() |
髙橋 大樹 | 札幌市 | 緑の宝石箱 (エゾシマリス) |
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東海林 勇 | 札幌市 | 厳冬の滝登り (カワアイサ) |
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林 恭郎 | 札幌市 | コミミズク 吹雪に飛ぶ (コミミズク) |
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今泉 俊雄 | 釧路市 | 森のアクセント (ナナホシテントウ) |
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鈴木 佳夫 | 岩見沢市 | 生命(イノチ) (エゾシカ) |
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森谷 時男 | 江別市 | 空中給水 (ホウジャク) |
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吉村 剛 | 千歳市 | 張り込み(オニグモ) | |
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津山 みづえ | 富良野市 | 手のひらを太陽に (エゾシマリス) |
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藤本 卓哉 | 恵庭市 | 雪舞う高みの孤影 (オオモズ) |
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山谷 守 | 釧路管内標茶町 | チャレンジ (サクラマス) |
植物部門(応募総数111点)
| 入選作品 (4点) |
氏名 | 住所 | タイトル (植物名) |
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|---|---|---|---|---|
| 1席 |
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横江 憲一 | 札幌市 | カムイ 天上に咲く (キバナシャクナゲ) |
| 2席 |
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長坂 雅美 | 北見市 | 春の岩稜 (エゾムラサキツツジ) |
| 3席 |
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遠山 薫 | 苫小牧市 | 絶壁に生きる (ミズナラなど) |
| 鮫島和子賞 |
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横山 達夫 | 江別市 | 静謐 (ヒトリシズカ) |
植物部門講評 審査委員長 奥田実
動植物の撮影において、特に植物は季節による変化が著しい。和名の特定が困難なことが多いものの、名を知ることは被写体の存在感や作品としての価値を高めることにつながる。野生種か園芸種、帰化植物かの確認も野生生物のコンテストでは重要なことである。
1席の「カムイ 天上に咲く」は、残雪の山並みと夕景時の雲がドラマチックに展開するなか、逆光線がキバナシャクナゲの花を透き通るように映し出している。初夏の大雪山の姿が臨場感あふれんばかりだが、右端の黒い岩稜が視線を惑わす。頂上部から右端を少しトリミングすることで花に集中できる。
2席の「春の岩稜」は、斜光線が岩盤の凹凸を浮き上がらせるなか、切り立つ柱状節理に自生するエゾムラサキツツジの開花を捉えた作品だ。芽吹き前のダケカンバや新緑の木立なども、厳しい環境を住処にする植物のたくましい生命を描き出している。
3席の「絶壁に生きる」は、大海に面した絶壁を住処にする木々の遅い春を捉えた作品だ。静かに波立つ淡いブルーの海原を背に芽吹く樹木はミズナラだろうか。岩稜中程の掌状の葉の小さな木立はエゾイタヤか、赤花はヤマツツジか。柔らかな色あいの作品である。
鮫島和子賞の「静溢」は、次々に頭をもたげ、一塊に開花するヒトリシズカを捉えた作品である。斜め上からの光が花茎を黒く塗りつぶし、葉の中央に開花する花々にスポットライトを当てている。上から左下に流れる枯れ枝が画面に変化をもたらした。
| 入選作品 (10点) |
氏名 | 住所 | タイトル (植物名) |
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|---|---|---|---|---|
| 優秀作 |
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東等 和子 | 釧路市 | ドレスアップ (ヤマブドウ) |
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出口 博司 | 帯広市 | 歓喜の春 (エゾヤマザクラ) |
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鈴木 佳夫 | 岩見沢市 | 春の水中花 (ミズバショウ) |
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津山 みづえ | 富良野市 | 倒木更新 |
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阿部 孝志 | 江別市 | 高嶺の花 (キバナシャクナゲ) |
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竹田 徹夫 | 渡島管内知内町 | 悠久の造形 (つる性樹木) |
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渡部 啓二 | 渡島管内七飯町 | 闇姫 (ツチアケビ) |
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村田 浩一 | 十勝管内音更町 | 氷華 (ノリウツギ) |
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浅野 晴也 | 釧路管内弟子屈町 | クリンソウの咲く森 (クリンソウ) |
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糸賀 一典 | 千葉県柏市 | 雲の上のごとく (エゾカンゾウ) |
U30特別賞
| 入選作品 (1点) |
氏名 | 住所 | タイトル (動植物名) |
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佐々木 新太 | 旭川市 | 木漏れ日 (エゾフクロウ) |























