北海道フラワーソン2022
5年ごとに野の花の開花状況などを市民が一斉に調べる「北海道フラワーソン2022」(北海道新聞社、北海道新聞野生生物基金主催)は、2022年6月18、19日の両日、道内全域で行われ、約2700人が参加した。こうした広域の自然状況を市民の手で同時に調べるイベントは全国的にみても大変珍しく、市民との協働による科学調査「市民科学」の先駆けと思われる。フラワーソンは、一般の市民から基本的に4~5名のグループを募って開催している。各グループは任意の場所を調査して咲いている花などを報告する。報告は約10キロ四方ごとに集計し、分布状況をまとめる。6回目となる今回は553地区で調査を実施。悪天候となった場合に備え、予備期間(6月20日~24日)も設けた。
花の開花状況は、これまでの中で最も季節の進み具合が早かった2002年と同様に3月から5月にかけては平均を上回る気温が続いた。開花地区数が多い花は過去の調査と同様の傾向であったが、上位は外来種が占める状態が固定されるようになっており、その中でもヒメジョオンやセイヨウノコギリソウが開花地区数を大きく増やし、逆に在来種のコンロンソウやマイヅルソウが大きく減った。これらの変化は、夏に咲く花の増加と春に咲く花の減少とみることができ、今回の季節の進みの早さと関係がありそうである。2021年から2022年にかけての冬には、全道的に記録的な積雪となったが、その後温かい日が続いて雪解け・植物の成長が急速に進んだ。札幌の気温の推移も、この25年の期間中、これまでで最も季節の進みが早かった2002年と同様に、3月から5月にかけては平均を上回る気温が続いた。
調査結果から季節の進み具合をみるために、確認上位の花に占める「春の花」と「夏の花」の比率を用いている。これまでの結果と比較すると、今回の調査は今までで最も春の花が少なく、夏の花が多い年となった。これはフラワーソンまでの春の暖かさと関係があると考えられ、5月の平均気温と夏の花の比率の関係に、よく対応している。季節の進み方は年ごとに大きな変動があるが、フラワーソンの結果からも、この25年間の温暖化の傾向はみてとれるようである。
2012年の第4回調査から花との関りが深い訪花昆虫10種の調査も行っており、この中で特定外来種のセイヨウオオマルハナバチは、確認された調査地区数が増加傾向にあり、特に海岸草原や農地周辺での広がりが見られ、今回は室蘭周辺などで新たな確認があった。
今回の調査結果をまとめた報告書(32ページ)は3月下旬に完成し順次、参加者らに配布した。調査結果や報告書に収容しきれなかった全植物・全調査地区はフラワーソンホームページ(flowerthon.net)にも掲載している。
なお、報告書にある北海道フラワーソン2022実行委員会名簿(表3)の地域アドバイザー、塩田惇(旭川外来植物研究会代表・旭川市)とあるのは塩田惇(旭川市)の誤りでした。